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中川先生の新刊「京都の近代」
現在の指導教官でもある中川理先生による新刊「京都の近代」が発売中。すずらんの街灯の紹介から始まり、単なる京都の近代化についてまとめだけでなく、近代化されていく空間の生成と受容の関係に注目し、政治、民衆、そして建築家などの技術者の役割についても検証が加えられている。また中川先生のこれまでの著書「重税都市」「偽装するニッポン―公共施設のディズニーランダゼイション」「風景学」などで考察されてきた複数のテーマが、京都という都市の近代化を舞台とし、一冊にまとめられていると考えることもできそう。

京都市と府の技師・技手の役割や、四条通の建築デザインのディレクションが武田五一に依頼されていたなど、興味ふかい事実も紹介され、現在の京都がどのように近代的産物であるかがよくわかる。
# by shinichi-log | 2015-09-13 04:07
かくかくしかじか
ちょっと前まで結構漫画熱でいろいろ読んでいたのだけれど
その中でも東村アキコの「かくかくしかじか」はとてもすばらしい作品だった。
あのどくとくのハイテンション+芸大への辛辣なつっこみがツボだったということもあるが
なんとなく誤魔化してきた過去の償いきれなさみたいなもの、どこまでも身勝手に生きれてしまうこと、みたいなことが絶妙のテンポで綴られている。
# by shinichi-log | 2015-09-13 03:37
建築のキュレーションとこれから
先日、東京での公開からは随分と遅れて京都で「だれもしらない建築のはなし」が上映された。
この映画のもとになったベネチア建築ビエンナーレには、関西のリサーチチームとして参加していたものの、映像を見る機会を逃していたのでやっと願いが叶ったという感があった。

プロローグの安藤、伊東といった流れに始まって、大変リズミカルに進行していく語りをまとめる編集のうまさもさることながら、各建築家がとてもオープンに意見を述べているのが印象的だった。伝説化してしまっているP3のような出来事が本人の口から語られることでとても生っぽいものだったことが再確認できる。

映画の中でも大きく取り上げられている磯崎の「キュレーション」的振る舞いに共感と、改めて興味を感じるとともに、現在において建築のキュレーションとはどのようなカタチで実現しうるものなのだろうかとも思わされた(建築展のキュレーションとは別なものとして)。社会と建築家の接点をつくる仕組み。行政と建築家をつなぐコミッショナー、不動産事業におけるプロデューサーという立場だけでなく、建築家と社会のネットワークを生み出すアーキテクチャを構想することに現在的なキュレーションの意義が存在しているのかもしれない。

余談だが、映画の中でもとても印象的で、カタログにも記載されている「ただ、正しい時間にただしい光が差し込むそういった美しさがあった」というレムの発言には、どこかフェルメールの絵画に描かれる室内について述べているような趣もあり、オランダ人としてのレムの美意識が感じられて興味深かった。日本人もフェルメールが大好きだ。
# by shinichi-log | 2015-09-07 13:10
今は亡き「湖国」
先週後半は余呉湖へ。念願の徳山鮨でおいしいひと時。
余呉湖でとれた鰻やあゆ、すっぽんに、山の幸を合わせるという見事なアクロバティクを披露していただいた。朝日をあびてうっすらと蒸気が立ち上る余呉湖は殊の外美しかった。
今は亡き「湖国」_e0055325_2121459.jpg


さて滋賀県はご存知のとおり湖国と呼ばれている。日本で一番大きな湖「琵琶湖」の存在がそう呼ばせているんだろう。けれど今回余呉湖を訪れ、またかつて琵琶湖周辺に40以上の内湖が存在していたということを知るにつけ、もしかしたら昔の人は次々と現れる大小の湖を見て湖国と呼んだのかもしれない、などと考えてしまった。そうした内湖の多くは近代になって干拓されて農地や宅地にされてしまった。そうしたのにはそれなりの理由もあったのだろうが、琵琶湖の生態系への影響も大きかったようだ。

人間はおそらくこれまでずっと、何かしらの方法で自然を飼いならそうとしてきた。その試みの一部は、人間にとって失敗し大きな環境破壊を生み、また一方でそれは成功して人と自然が共存しているかのような風景を生み出してもいる。なので、干拓してしまったことをとやかくいうわけでもないが、今はなき内湖の風景を私たちはおそらく半永久的に失ってしまったことが、ただ少し残念だと思った。

ちょうど帰りに話題のラコリーナに寄ろうと車を走らせていると、やたらとフラットな土地が広がっている。気になって地名を見ると「大中」という地名。かつて最大の内湖「大中湖」があったその上を走っていた。
# by shinichi-log | 2015-08-21 21:03 | daily
坂出人口土地
坂出人口土地を見てきた。
坂出人口土地_e0055325_19323446.jpg

坂出人口土地は香川県の坂出市の駅からすぐのところに建っている。
一階の街路に面したところに店舗を配し、背後には駐車場、そして2層以上(実際は一階の階高が2層分)に団地が計画されている。1968年竣工の一期から1986年の4期まで建設が続けられ、一部には市民ホールまで付属している。なぜ人口土地というかというと、住宅の載っている2層目がコンクリートの地盤になっているからで、その上にいわゆる団地が建ち並んでいる。人口土地というコンセプトは頭では理解できていたのだけれど、実際にどんな空間なのか、ほんとうに土地として感じることができるのか、ということが写真をみただけでは正直全然ピンと来ていなかった。
坂出人口土地_e0055325_1933993.jpg

さて、念願の人口土地に降り立ってみると(実際には登り切ると)やはりというか、そこを素直に土地として受け入れるには難しい。ただし非常によくできた立体的な屋上空間だと言われればすっきりする。屋上だけど車が停まっていたり、そこいらに花壇や木が植えてあるので、とても街的、路地的な空間が生まれている。しかものぺっと地盤が一枚あるだけかと思っていたら、部分的に2層になっていたり、傾斜があったり(市民ホールの斜めの屋根の上に段々上の住宅が立ち並んでいる)とかなり立体的な土地が想定されているようだ。また、大高さん設計の住棟も年代によってデザインが微妙に異なっており、どれも大変かっこいい。

現在では老朽化や、部屋の狭さ、お風呂がないなどの理由で空き室が目立つ。人口土地というコンセプトにはおそらく下部構造としての土地があり、上部構造としての住棟が更新されていくというイメージがあったのではないかと思われるが、現実にはそれも難しいようだ。もしかしたら人口土地以前に立ち並んでいた木造バラックのような建築であったなら更新も可能であったかもしれないが。

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とはいえ、老朽化は進んでいるものの、入り組んだ住戸の配置や、身体的なスケール感は大変魅力的であるし、ずっと住み続けている住人による様々な増改築のつくりだす雰囲気は、建物を生き生きとさせている。そして坂出人口土地はある時代の理念が結実した貴重な証言でもある。すでにdocomomo100選にも選ばれ、また市でも活用の動きを探っているようなので、丁寧な利用と保存を期待したい。

あまり期待していなかった市民ホール(当然、大高さんの設計なのだろうと思われる)だが、これがよかった。壁面は重厚感のある木パネルで覆われ、天井は頂部に向かって細やかな木のルーバーが用いられており、大変美しい。

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# by shinichi-log | 2015-08-21 19:34 | daily



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by shinichi-log
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