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可視化される壁
グローバルな資本優位の世界では
資本と人の流動性は分かち難く結びつく。
資本の蓄積が進むところに、人も集積する。

そして資本は流れれば流れるほど持つものはより多く持ち、
持たざるものはますます難しいことになる。
そうして生まれる格差は、エリアの分布として可視化される。
結果、同じ一つの都市に二つの異なる民族が、隔りを持って存在することになる。

パリはその境界がどの都市よりも明確だ。
かつての城壁のように現在では超高速の車の流れが
この二つの民族を分断する。
内側は世界中の人々を魅了し、活気ある様々な催しがおこなわれる。
それに対して外側は、パリを維持する様々な機能を持ちつつも、見向きもされ無い。
結果、対立は先鋭化し、壁が築かれる。
(イスラエルとパレスチナの壁のようにそれは計画的に作られた)
その先にあるのはエスカレートする運命にある小競り合いだ。

東京は、この境界が限りなく入り組んでいる。
むしろそれはパッチワーク状に都市全域を覆っている。
一部のエリアは開発され尽くした結果、大きなセルを形成しているものの、
そのすぐ隣には時代に取り残されたような極小のセルが存在している。
対立はパリとは違った方法で見えないものとされているし、
その方法は対立を先鋭化させるのではなく、内側に取り込む。
見えないようにすることで、無いものとすることの危うさは、
なお潜在性として存在し続ける。

グランパリはこの境界の外側までを対象として含む。
東京から比べるとその一つ一つのセルはかなり大きいが
内と外の対立の激化を和らげるためのパッチワークへの変換が目論まれている。
それがうまく機能するかは、誰にもわからない。

今のところ、都市の境界が指し示す分断が、
最悪の結末を示しつつあるのかもしれない。
# by shinichi-log | 2015-11-15 01:21
サイゴンの熱波
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昨日まで、某企画の取材でベトナム、ホーチミン(サイゴン)を訪問。実は初めての東南アジア。洪水のように押し寄せるバイクの群れ、路上の屋台、非常に巨大な街路樹、次々と建設されていく高層ビル、まさに発展中の都市の熱気を身体中で感じることができ、大変良い経験ができた。心配していた食べ物も、現地に行ってみればこういう美味しさもあるのかと脳のモードが変換されていろいろとチャレンジできたものの、舌はごまかせても胃腸はごまかせず、、、

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その中でも、一番印象的なのはやはり大量のバイク。車は税金が高いらしく庶民はもっぱらバイク。しかも二人乗りは当たり前で、3人、ひどい時は4人乗りも結構見かける。しかもラッシュ時にはガンガン歩道を走り抜けていく始末。危ないこと極まりないのだけど、よく見ると観光客以外あまり歩いていない。みんな移動はバイクだから歩道を走行してもそこまで害はないのかもしれない。おあつらえ向きに歩道の淵の縁石も勾配が付いていて簡単に乗り上げ可能だったりする。

とはいえ意外に歩道は広い。中心部は都市計画がしっかりと作られているためだと思われるが、そのため歩きやすいというのではなく、路上に客席が展開し、バイクが走る。

バイクや歩道自体は日本にも存在しているものの、それをどのように用いるのかというところにローカリティが反映されていて興味ふかい。考え方やプロダクトは世界的に均質化しつつも、それが実際に使われる場面において差異生まれ、コンテクストが浮かび上がる。

最終日には、ボー・チョン・ギア事務所の作品を4つほど見学(岩元さん、ありがとうございます)。日本で竹構造に取り組まれている陶器先生も一緒だったので、日本の竹建築との違いについての話も伺うことができて興味深かった(そもそも竹の種類がぜんぜん違うわけだけど)。ギア事務所の初期と最近の竹の建築両方を見せてもらったが、接合の方法や規模が確実に発展している様子を確認することができた。その他、屋上緑化された保育園と、元パートナーの西沢さんがパートナー時代に設計された住宅を見学。こちらは「グリーンビルディング」というギア事務所のもう一つの大きなテーマを反映している作品たちなのだろう。特に住宅の方は巧みな断面構成と壁面の装飾ブロックが豊かな光と影、風といった室内環境を建築全体につくり出しており、また隅々まで丁寧にデザインされたディテールと相まって、大変印象深い空間体験だった。
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おまけ・・・現地で建設コンサルを経営している方に話を聞くことができたが、今ではベトナム国内のゼネコンも技術力を上げてきており、高層ビルを自力で建設できるようになっているのだという。韓国や中国企業が下請けに入ることも珍しくないという。シーザーペリが設計した、頂部の照明デザインが美しい構造ビルもベトナムのゼネコンが手がけている。「手先が器用で真似が上手い」日本人とも通じる国民性を持っているベトナムがどのように発展していくのだろうか。
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# by shinichi-log | 2015-10-27 23:16
水のなせる技 - DE06のメモ
DESIGN EAST06が、山口と大阪を舞台に「豊かな水資源」を切り口としておこなわれた。
残念ながら山口の2デイズは参加できなかったが、3日目の大阪に参加してきた。

午前中は大正区のクルーズ。水の都大阪らしく大正区はその周囲をすべて運河で囲まれる。その周囲をぐるっと回ると、コンテナ、倉庫、資源置き場、そして工場など河川、港湾を構成する要素が次々と現れる。大正区長の軽妙なガイドアナウンスのもと、普段見ることのできない運河からみた都市が可視化される。

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# by shinichi-log | 2015-10-13 13:58
ワンアイデアからワンアクションへ
仕事の関係で建築新人戦へ。
最優秀に選ばれたのは九州大学の作品。
町家に筋交いの壁(断面的に斜めの壁)を挿入するというもの。
一見ワンアイデアの大振りな案に見えたが、実際には筋交いの挿入というワンアクションで複数の課題にたいして言及している。ワンアイデアのおもしろさというよりも、ワンアクションの鮮やかさとでもいうのだろうか。ツッコミどころも多いかもしれないが、2回生後期の課題作品にたいして多くを求めすぎるのは如何なものかと思う。

ともあれ、このワンアクション。
実際はかなりコンテクストに依存している。
コンテクストが理解できなければこの操作の意味や意義がなかなか理解できず、単なる形態操作のためのワンアイデアとしてしか受け止められない可能性も高そうだ。逆に言うと、ワンアイデアはコンテクストに依存しなくても、そのおもしろさが伝わりやすいものと理解できるかもしれない。

今後、この作品はアジア大会にも出展されるようだが、そこでは木造の町家に筋交いをいれるということにたいする共通のコンテクストが成り立たない。では、いかなる戦略が求められるのか。丁寧にコンテクストを伝えたうえで、ワンアクションの意義を問うのか。もしくはワンアイデアとしてみせることで、コンテクストを共有しない場において作品のプレゼンスを問うのか。

明日はSDレビューの公開プレゼンが大学であるので、今日のような発見を楽しみに参加したい。
# by shinichi-log | 2015-10-04 00:40 | daily
既視感の先に - 安保法案の採決について
街中では安部やめろ、戦争法案反対のデモ行進。
テレビでは既視感でしかない強行採決。

確かに今日の採決のやりかたは(毎度のコトながら)許しがたいものだった。
だがしかし、どうしてもデモに熱く加わろうというふうに思えない。
思えないというか、思わないということを許容しようとしない空気にたいしてどうしても距離を取りたくなる。

「デモ」は民主主義の非常に重要な表現行為だと思う。
それゆえそれは権力によって妨害、制御されるべきものでもない。
警察のコントロール下でなければ、許可を取らなければできないようなものでは違うはずだ。
それはもっとナチュラルなものでよいと考える。

けれども、デモそのものが現実の仕組みを変えうるものかというとそれは違う。
デモは表現行為であるのだからそれが変えうるのはいわば「空気」だ。
そして、当然ながら世の中の空気を変えることは非常に重要なことだ。
特に日本のように空気を読むことに非常に重きをおく文化であればなおされではないだろうか。
しかし、おそらく私たちが築き上げてきた立憲主義にのっとった民主主義というのは、
そうした空気によって恣意的に政治が、現実が変わらないようにという
かなりめんどくさくて、慎重な仕組みをつくりだしてきたのではないかと思う。

たしかにデモが表現する民意は無視してはいけないが、
デモは適切な選挙行為とともにあるべきではないか。
デモに足を運べる人は限られている。
突き詰めれば可能かもしれないが参加のハードルが人によってかなり差が生まれる。

それにたいして選挙はだれもが投票できるような制度を私たちはつくってきた。
だから、デモによって空気を変え、選挙によって現実を、政治を変える。

その上で、選挙に行こう、落選させようだけではダメだということを真剣に考える必要がある。
落選させるにも、代わりにだれかに投票しないことには実現されない。
代わりとなる選択肢がないことをどうすれば解決できるのだろうか。
観点はいろいろあるだろうが、個人的にはその一点につきると思っている。
われわれはいかに参政権の拡大をはかれるのだろうか。
# by shinichi-log | 2015-09-18 02:29



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by shinichi-log
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