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SD Review2008
今年のSDReviewの写真と感想。

土井一秀
AUBERGEH
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小川晋一さんの事務所出身のかたらしく非常にミニマムで美しい建築。なおかつ風景への視点も提示され非常に完成度が高い。


末森憲義
OFFECE A

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ロフトへの階段が外部に設けられる事で純粋にスラブだけを見せるというのは、空間の状態として面白そうだな思った。木のイメージを用い全体のインフラや生成をデザインに取り込んでいる。


米澤 隆・岡慶一郎・金澤 潤・野村直毅
公文式という建築

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一階の木の机、2階のガラスの机が対比的に表れ、下から見上げるとガラスの机におかれたノートや筆箱、花瓶などが浮かんでいるようにみえる体験が面白い。細長い家型をうまく公文式という形式に落とし込んでいる。


松尾 宙・松尾由希
A Project

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上部のヴォリュームの突起物にめがいくが、むしろ地としてのピロティーへの意識がこの建築の核である。通常のピロティーのもつ暗さや重さを、屋上前突き抜ける三角形の吹き抜けで解消しつつ、2階の室内空間にも斜めの壁による文節という面白さをつくり出している。


増田信吾・大坪克亘・島田雄太
風がみえる小さな丘
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おそらく、今回の展示の中ではもっともラディカルでプレゼンのうまさが光っていたように思う。一見するとよくわからないが、風によって揺れる物見台である。揺れるというのもただぐにゃぐにゃした形というのではなく、実際の風によって建物が揺らぐのである。構造設計に佐藤淳さんが入っているのでこんなことも有りなんだなと納得させられてしまう。この揺らぐというのもただ奇抜なアイデアではなく、敷地との読み取りの上で捉えられており、美しいドローイングとあいまって非常に魅力的な提案。


生田京子・下村将之
forest bath

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逆パースの模型写真がきになる。実際は家型をもう一回家型に分節したというか、小さな家型から大きな家型をつくったというか。通常とは反転した切り込まれ方によって新しい風景の切り取りが行われている。逆側の低く抑えられた水平方向の開口との対比も面白い作品。


松岡 聡・田村裕希
R House
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広大な風景の中で存在感を持った佇まいが探求されている。平面の四隅を引っ張る事で、床面積を保ちつつ見附の面積を大きくし、同時に構造的にも合理的につくられている。非常に薄い空間と、その空間を挟む開口部の表れ方もおもしろい。


森 元気
ふたりの家
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近年比較的多く見られる隣の空間の気配は感じさせつつも、身体的には隔てられているように空間が分節された住宅。ただ壁が少し傾いている事でスキマが見慣れない空間へ変化するとともに、気配の質をも変化させている。ただの壁の隙間から、ある意味土木的な質をもった隙間に変化
している。模型につくり込みもすごい。。。

小川文象
スケルトンハウス

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空間の要素がすべて透明素材で出来ている為に、設備の管が線として表れてくる。また、家具や、雑貨等がオブジェとして空間に浮かび上がる。空間の溶解、レイヤーの重なり等がつくり出される。実際どこまでがスケルトンなのかよくわからなかった。まさかトイレはちがうだろう...


大塚智己・神保美苗子・瀧澤祐介西尾勇祐・堀 悠吾・矢口広和曽我部昌史・丸山美紀/神奈川大学曽我部昌史研究室+マチデザイン
京急高架下文化芸術活動スタジオ――黄金町地区


かつて特殊飲食店が多数立地していた中区初音町、黄金町、日ノ出町周辺を「文化芸術のまち」に再生させる試みとして文化芸術活動スタジオの設計。すでに完成しており、横浜トリエンナーレの関連イベントとして黄金町バザールが開催中。


玉木浩太・久保田穂積
三つ屋根の下で、
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非常に若い2人組の作品。個人という単位を基本としつつもそれでも緩やかに繋がっていこうとする家族の姿がそのまま建築化されているようだ。このような屋根のような建築というのも比較的見る事が多い。もちろん昨今の若手による篠原一男再発見のようなことも一因かもしれないし、屋根のもつ空間性自体を主題にしているものもあるが、単純に屋根というものにシンボル性を担わせるのは単なるイメージ操作なような気もしてしまう。


百枝 優
長崎の家

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一昨年にもSDに入選しているので20代前半で2度の入選というのはすごい。前回はギャラリーという機能的にもあいまいなものであったが、今回はそこそこ大きな住宅なので少し意味合いが違うのかもしれない。この作品もプレゼンの仕方にも表れているように「風景」への志向が強い。それも、長崎という土地のもつ魅力的な風景を住宅中央の階段として取り込むだけでなく、その斜めの要素が構造的にも、そして住宅の部屋の質を大きく2つに分ける要素にもなっているところが上手い。


木村吉成・松本尚子
三人の作家のためのアトリエと住宅
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上下の空間のずれによって、空間の文節を曖昧にし、視覚では捉えきれない要素を、隣接する部屋の気配によってつくり出そうとするもの。単に気配だけでなく、光のあり方等が上層の文節によって変化し、美しい光と影の風景を内部につくり出している。模型もしっかりとした大きなものがつくられており、建築のもつ空間の質を豊かに表現している。


吉村真基
フクシマモデル
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三角形に微分された形態が、内部とも外部ともつかない不思議な空間をつくり出している案。敷地模型はどうしても鉄道の方へと目がいってしまう。


梶田知典・清水壮輔・丸山 傑
風景のレストラン

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これは早稲田の古谷研の学生によるもの。去年も古谷研はレストランの計画で入選しているので、このレストランもほんとに建つものなのか怪しい気もするが、非常にダイナミックな構成を見せてくれる。ここでも「風景」なのだが、メガホン型の視覚/空間装置による風景の切り取り、そして視覚装置としての建築のあり方に幾分疑問も覚える。


今年の全体を通してみるとなんとなく「風景」ということに考えが向かってしまう。
しかし一言「風景」といっても建築における意味合いは様々である。たとえば「風景のレストラン」は単純に風景を見せるための装置としての建築でるし、これは「forest bath」での逆パースの森の切り取りの仕方にも言えるかもしれない。それに対して「AUBERGE H」「R House」「風がみえる小さな丘」は周囲の環境の中での建築の佇まいという意味合いでの「風景」という捉え方をしているように思える。これは建築をも環境の中に組み込んでいこうという意味も含まれるように思われる。また「長崎の家」では、周囲の環境というよりは、建築自体が風景を内包するようなイメージを与える。この階段はまさしく長崎という都市をその内部に取り込んでいるのであり(どことなく原広司を感じさせる。原邸や京都駅)、都市のコンテクストを入れ子状に取り込んでいる。また「ふたりの家」「スケルトンハウス」もある意味、建築の内部に風景を生み出そうとしているように感じられる。多様な捉え方があるにせよ、建築を単体で捉えるのではなく環境の一要素として捉えるような意識を感じる。

また今回は80年代うまれの若いアーキテクトが数組入っており、00年代を越えていく力強さも感じた。
by shinichi-log | 2008-09-26 19:13
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