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今年は本当に雪の日が多い。先週少し暖かかったと思ったら昨日からまた雪で、今朝も真っ白な世界が広がっていた。

そんな気候に影響されてか、中谷宇吉郎著の「雪」を手に取った。岩波新書の最初の20冊の一つとして1938年に出版された半古典的一冊。雪博士の異名を持つ中谷博士が雪の結晶の持つ美しさに魅せられ、どのようにしてその神秘的な世界を明らかにしていったかが語られている。それはただその時点での最新の研究成果を科学的な視点から語るというものではなく、むしろ雪に魅せられた一人の人間が、その神秘の世界の探検記を記したかのようである。

「雪」によると、一口に雪の結晶と言っても千差万別の形があり、よく知っている六角形を基本としたものだけでなく、針状のものや、柱状のものなど、その時の気候条件によって全然雪の種類が異なると言う。「雪は天から送られた手紙」という博士の言葉のように私たちの上空にある遥か何千メートルの先にある天から地上までの経過がその時その時の「雪」ノ結晶を作り出す。

雪という美しい自然現象をただ美しいとしてとらえて表現するのが芸術であるなら、その美しさの裏側に潜む摂理やメッセージに感動し、なおかつ人の役に立つという姿勢が科学というものではないか。この本でも一章でまずいままで「雪」がどれだけ雪国の人間を苦しめてきて、雪を研究することの意義が述べられている。確かに博士は人間の英知がどんどん人を幸せにしていくという強い信念をもついわゆる近代人であったかもしれない。

しかし「まず自分の周囲に起こっている自然現象に関心を持ち、そしてそこから一歩でもその真実の姿を見るために努力することは無益なことではない」と語る博士の言葉は、表面的現象と、そこから来る感傷に浸りやすい昨今の状況において、多くの示唆を与えてくれる気がする。

ちなみに石川県に磯崎新設計の「中谷宇吉郎 雪の科学館」があります。
雪_e0055325_1645499.jpg

by shinichi-log | 2008-02-24 16:45
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