建築学会都市史小委員会のシンポジウムが大学を会場に開催されていた。
『都市史の基層として大地・地面・土地を考える』という意欲的なテーマが掲げられ、建築や都市の歴史だけでなく、歴史地理や環境考古学の知見が導入されることで新たな都市史の展開を見据えていこうというものであった。 あくまで個人的に興味深かったトピックだけ備忘録として書き出し。 (河角氏発表より) ・地理学の時間のスケールの中で平野ということに絞ると1000年ほどの単位で観察できる ・数百年スパンで見ても地面というのは一定ではなく頻繁に変化を繰り返している - 場所によっては平安京時代と現在では3mほどの高低差があり、等高線も変化している。 ・そうした地形形成も単純なレイヤーとしてではなく、堆積-安定-浸食といったサイクルとして認識する(15,16世紀に洪水が頻繁に起っている)。 ・大地といえどもそれは河川による堆積によって生み出されていること、今の大地がどの河川の堆積物によってできているか ・市街地の発展は水の利用とも関係しており、それが扇状地で開発が進む理由でもある。 ・必ずしも一様に地形変化が起るわけではなく、また安定不安定が変化する。災害のリスク等は微地形レベルでみていく必要がある ・GISなどの情報と発掘調査などの連携の可能性 (樋渡氏発表より) ・ベネチアをテッラフェルマの流域的に把握することで、海洋貿易都市の基盤がみえてくる ・筏流しの文化を含む、様々な流域ネットワークが、下流のベネチアを支えていた。 ・イタリアの筏流しにも組合がありリレー形式で下流まで木材を運んでいた。 ・大地の問題を水の空間軸でみていくことの重要性 (福村氏発表より) ・イタリアの都市計画の中で展開してきた「環境(アンビエント)」「風景(パッサージュ)」「領域(テリトリー)」概念の変遷と現在的利用 ・戦後期の科学的都市計画の模索における社会経済学的手法の導入 ・歴史や都市の資料の有無の重要性。異なる視点で土地史料を読み直すことの意義。 最後のコメントで青井先生がおっしゃっていたように、このような地理的で広域のネットワークとして都市を捉える議論の可能性を感じつつ、ますます建築そのものが視野から消えていくことへの懸念はどのようにとらえればよいのだろうか。世界を構造的に把握することが建築の本義であるならば、建物を建てるという行為は、その現実的なモデルとして構造的な把握のための訓練であり、なおかつそれを身体化しつつ、思考を生み出していく行為として位置づけられねばならないのだろうか。
by shinichi-log
| 2014-12-12 18:48
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