京都工芸繊維大学デザイン科学専攻修了制作展2009ー下川一哉講演会
デザイン科学専攻修了制作展2009の特別講演会に行ってきました。日経デザイン編集長の下川一哉氏と、エストニア国立大学教授の阿部雅世さんというキラっとひかるセレクションで、実際すごく面白い内容だったので、今回と次回でそれぞれレポートしていきます。

まず下川さんの講演タイトルは「インハウスデザイナーとは」。どちらかというとあまり知られていない企業デザイナーについて、具体的な例を挙げながら、今後のありかた、またデザイン自体の担う役割の変化について。インハウスデザイナーとは、つまり企業のアサインに従ってデザインをする人の事だが、近年では単に次世代モデルのデザインにとどまらない戦略的役割を担うようになって来ているとのこと。

例に挙げられたのが、Panasonicである。昨年NationalがPanasonicに統合され新たな道を進みだした同社のデザインを行うのがパナソニックデザインカンパニー。そのミッションは、「ブランドの価値を高め売り上げを伸ばす」という明快なもの。そのために行われるここの取り組みは形のデザインを超えた戦略性が問われている。それは①新たな価値創造、②海外拠点の整備、③グループを生かしたデザイン戦略。
①では先進性やプレミアムな満足感を生み出すためのデザインが追求される。例としてデジタルカメラのLumixがある。Lumixというのは独自技術の名前であり、その技術をデザインによってかし化させていく事が求められている。(Panasonicというロゴより技術が価値になる。)またカラーリングにおいても家電がインテリアの一部として存在するように、インテリア業界の分析を通じて行われていたりする。②でも単なる情報収集という役割から、マーケティング等と共同したリサーチを行ったり、③はPanasonicという企業の家電から住宅まで扱えるという強みをいかに生かすかという取り組みがなされている。

インハウスデザイナーの強みとして、デザインと技術と経営で起こすイノベーションを学べる事ではないか。この3点がそろって始めてイノベーションをつくり出せる。その現場を学ぶ事が出来る点だろう。そして、企業の持つ高い技術力、先端技術に触れる事が出来るので、ecoやユニバーサルデザインに関する先端的なデザインを行う可能性にも開かれている。

とはいうものの、未だにデザイナー自体の地位の低さ(欧米に比べてという話)が問題にもなっている訳で、如何にデザイン自体、デザイナー自体の価値を企業や社会に伝えていくのかという問いがあり、それに対して下川さんの提案として面白かったのが、知的財産という考え方であった。つまりデザインを装飾として認識してもらうのではなく、知的財産としてきちんとその価値を誰にでも分かるように顕在化すること。これは企業側が行う事もあるだろうけれど、デザイナー自身も意識的にならなければならない問題でもあるだろう。もう一方で、インターネット等のアンケートで一般の人からデザインの価値に関する具体的な数字をあげることで、デザインの必要性を示し、デザインと投資と売り上げの関係を少しでも裏付ける事に繋がっていくのではないかという事であった。

また昨今の gooddesign受賞作をみても顕著なように、デザインが色や形を越え始め、体験や幸福感といった問題をどのようにデザインによって実現するかが問われているのではという下川さんの指摘もおそらく重要で、ますますデザインの評価のされ方が変わっていくと思われる。そうした時にどのような価値基準をもって評価されていくのかをデザイナー自身が意識し、そして社会と共有していく事が求められていくのではないだろうか。
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by shinichi-log | 2009-02-13 10:14 | Lecture log | Comments(0)
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