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東浩紀×浅田彰
浅田彰氏が京都造形芸術大学の大学院長に就任されてますますパワーアップしていく造形大で、その浅田氏コーディネートの連続公開レクチャーが昨日からスタートし、第一回目として東浩紀氏がレクチャーを行った。

東氏と言えば批評空間によって浅田彰によって見いだされデビューした人なので、なんとなく両氏の間には師弟関係のようなものを想像していたのだが、実際は8年ほどは会った事も無かったというふうに、東氏がサブカル系オタク論に転向したある種の「裏切り」(浅田)を行った事によって随分二人の距離は広がっていたんだなと確認。別に仲が悪い訳ではないみたいだが。


浅田氏も早口だが、東氏もそれに劣らぬ早口トークで「社会契約と動物化ーオタク的公共性の行方」というタイトルのもとぎっしりとつまったレクチャーを展開。


導入・・・
近刊の『リアルの行方』での大塚英志との(驚くべき噛み合なさの)対談の話から、2人の認識の違い「動物化したら公共的じゃない」(大塚)vs「動物化しても、いい公共性を考えよう」(東)が提示され議論が進んでく。


「動物化」について・・・
本人自ら簡潔に説明される事で、解釈の幅の広い「動物化」という言葉の意味がクリアになっていく。そこで「動物化」を理解するための2つの文脈、「消費社会論的文脈」と「監視社会論的文脈」がしめされる。
前者は、コジェーブによって提示されたいわゆる歴史の終焉(世界や自己の〈言説による〉認識がないまま文化が消費される)後の世界に存在するであろう「日本型スノビズム(行き過ぎた形式主義)」と「アメリカ型消費社会」の話。東氏によれば、これは歴史が終焉したというより、世界の複雑性が増大する事で近代を支えていた〈幻想としての理念〉が維持できなくなっただけではないかということなのだが。現実には「アメリカ型消費社会」が支配的なモードになってしまっていることによる動物化。
後者は、近代的な規律訓練型の社会から、環境監理型への移行によって工学的に監視監理されていく主体という存在のあり方による動物化(人間園・・・)。
ただ東氏はこの現状を批判的に視ているのではなく、このような現状(大衆の欲望の集積の結果)に希望を見いだそうとすることに価値をおいている。


公共性と公共財・・・
そのような動物化理論を踏まえ、導入でもしめされた「公共」について話が移っていく。ここでは、「公共性・公共圏」と「公共財」という2つの公共概念が示される。
前者は、いうなれば「言論の空間」。各人が自由に発言できそれによって主体として認識し合うという、ハーバーマスやアレント経由の公共概念。
それに対して、公共財とは「消費において非競合性、あるいは非排除性を備えている財」のことで、灯台とか道路等がそれにあたる。つまり、市場の失敗を補う政治的な役割としての公共財の供給。(経済)
つまり一方は言論空間の事であり、もう一方は経済の事であってじつは関係性が無いと言うのが東氏の説明。そして先ほどの東、大塚の対立はこの2つの公共概念の差異ではないかという。

もちろん「動物化」によって言論空間としての公共性は成り立たない、というか関係がない。それに対して、公共財の問題は動物化した社会においてこそ可能性をはらんでいるのではないのか、新しい公共性の可能性が示せるのではないのかというのが東氏の主張である。(googleとかSNSとか。蓄積された情報がメ多次元での無意識的秩序をつくり出す・・・)


社会契約論に向けて・・・
以上の話を踏まえてこれからの展望が示される。それは近代社会論のマスターピース「社会契約論」を読み直す事だという。ここでは、今から読み直すと相当不思議な内容が書かれていて、現代社会を読み解くカギを見つけ出せるかもしれないという。このように、単なる現代文化論だけにとどまらない広い視野と教養を持ちえているのも東氏の魅力の一つなのだろう。


最後に・・・
浅田氏と東氏の討論の時間も持たれ、浅田氏が動物化した人間が一方で承認(他者とのコミュニケーションの欲求)を求めるのか、事態は「スノビッシュな動物」というふうになってるのではないか、またはポパー(現在)vsアドルノ(20c後半)の関係などにも言及。そして、芸術やデザインがいかにして存在しうるのかというとても興味深い問いが東氏に投げかけられた。ここで面白かったのは、アート等が存在するにはある種の理念(制度)のねつ造によってしかないということの他に、何がコンテンツかを区切る境界線が今問題ではないかという提示がされる。例えばニコ動などでもそこに流されている映像と打ち込まれた字幕があってそこにコンテンツがどこまでかという線引きは難しい。そういうふうに線引きの問題がかなり実際的になってきているとのことであった。
by shinichi-log | 2008-10-08 05:34 | Lecture log
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