Lecture Log3~ピーター・メルクリ講演@東京国立近代美術館
先週末に開かれたスイスの建築家ピーター・メルクリの講演会のLog

まずありえないという日本での講演会。開場前から行列ができ、席もすぐに満員になっていました。ちょとしたアクシデントから、メルクリ氏の希望もあってかつての教え子でもあるアトリエワンの貝島さんが、最初(初)通訳を勤める事になるという場面もあり、それはそれでとても貴重な体験であったし、メルクリ氏の人柄を伺い知る一場面となった。

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講演は、2つの建築、代表作の《彫刻の家》と新作の《ノバルティス・キャンパス・ビジターセンター》について語られた。両者に共通するのは、周囲のランドスケープとの密接な関係性の取り方と、素材のセンシティブな用い方にあるののではないだろうかと感じた。

《彫刻の家》は、ある種自然の中にコンクリートのboxが孤高にかつひっそりと佇んでいるような印象を受けるが、実際建築は周囲のランドスケープと密接な関係をのもとその形態が決定されている。それは目地の扱いにまで及び、非常に長い時間をかけられた。プランを見ると、シンメトリー性があえてずらされ、3つのヴォリュームをつらぬく開口がアシンメトリーに配置されている。またそれぞれの天井高も変化している。それはランドスケープの上下に異なった川との対応や、内部にも空間や光の濃淡が微妙につけられる事になという。「風景を引きつけ、はなしていく(メルクリ)」。
そのようなシンプルさは、周囲の風景と結び合う(関係づけられることで結びつきが生まれる)事で多様な表情を持つ事になる。

そのような建ち方の話以上に印象深かったのは、素材の扱いについてであった。コンクリートの仕上げは、きれいにし上げる事よりも、石のように自然なものとして扱われ、完璧さを求めるよりも素材の持つ官能性を引き出すことが重要とされているという。そしてそのために、目地が雨によって浸食されることをも考慮されているという。それは単なるきれいさとか、新しいという概念を超えた、情感豊かな美しさだと思う。

インテリアに関しては、展示に即して意図的にデザインする事は無く、偶然性を受け入れ、そこから事後的にどう展示していくかを考えるという話であった。この部分は同時に展示されている青木淳氏と共通するような考え方なのかもしれない。


《ノバルティス・キャンパス・ビジターセンター》
さきほどの《彫刻の家》とは大きく異なり、バーゼルという都市の中の製薬会社の敷地内にたつビジターセンター。世界中の建築家(sanaaとか)がofficeなどを建てている中の一つとしてたてられており、隣接するのはDiner&Dinerの建築が建っている。

ここでも周囲のランドスケープとの関係が語られ、隣接するDiner&Dinerの建築が色を多様していることから、アルミのファサードはゴールドに塗られている。この状況的な対応は、ゴールドは絵画の額縁から着想を得てニュートラルなものとして提示されている。また、トラバーティンは元あった建築とのレファレンスを保つために使われている。ノバルティスでは多様な素材の融合によって、センシャルな質感が作りだされているようだ。
また、スペースのあり方についても語られ、オープンスペースの中のプライベートな場所の重要性が述べられた。例えば、それぞれのオープンスペースには、異なった趣向の家具がおかれそれぞれの場所性をつくりだしているし、またトイレがプライベート性を保てる空間として特に重要視されデザインされたという。

最後に、無限にある形態の可能性の中からどう決定していくかの問いに、ボードに図を描いて熱心に語られた。それは自分なりに語り、決定する枠組みを作り上げる事につながっていくという。

メルクリの建築は、素材や風景との絶え間ない対話の中から、そしてじっくりと時間をかけた自らと建築との対話(展示されている多くのドローイングもその一旦なのだろう)の中から立ち上げってくる。決して感性だけにもまた理論だけにも偏らない、物の根源まで立ち返りつつ組み立て上げられる建築と言う結晶であるように思われた。
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by shinichi-log | 2008-06-13 19:37 | Lecture log | Comments(0)
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