パラーディオの街
※なぜか画像が横倒しにしかならないです。すみません。。。
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少し前のことになってしまったけれど、ベネチアから特急列車で40分、後期ルネサンス期の建築家パラーディオの街として有名なVicenzaへ足を伸ばした。学生時代にイタリアを旅行した時に、この街のユースホステルで数泊し、周辺の街を巡ったこと記憶もあり、懐かしい再訪となった。実は、その時にもパラーディオ建築を見て巡っていたはずだが、正直よくわかっていなかった、というか何も見えていなかったんだと改めて反省させられた。

この街には、その名の通りパラーディオが設計したパラッツォ、教会、劇場が点在し、街から少し離れた丘の上にはかの有名なヴィラ・ロトンダも建っている。彼がパラッツォをこの街でいくつも建設できたのは、どうやら単なる人気建築家だったからというだけでなく、当時ヨーロッパで最新のデザインだったローマ時代の建築様式を用いた建物によって、ベネチアの支配下にありつつもVicenzaという街の権勢を示そうという有力者たちの想いがあったようだ。

学生時代にも数日この町に滞在し、ここを拠点に周辺の街を巡ったことがあった。その時にもパラーディオ建築を見てはいたはずだが、何も見えてなかったんだと反省。今回は非常に収穫の多い見学だったので幾つか感想とメモを残しておこうと思う。




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まず、パラッツォ・バルバラーノ。これは、すでに建っていた複数の建物を1つにまとめ、その上で通りに面した共通のファサードが設計された非常に規模の大きいパラッツォ(言うなれば都市型の豪邸)だ。外からは見ると大きな一つの建物だが、内に入ると建築のつなぎ目が可視化されていて面白い。当然各建物で構造もプランも違っていただろうから、古代ローマの理想を描いてそれがそのまま実現するということではなかっただろう。複数の形式と歴史に共通のオーダーを与えるには相応のアイデアと緻密な設計が必要になったことだろう。

現在は、パラーディオ美術館になっており、様々な資料を見ることができる。建設費を下げるための様々な工夫(円柱をレンガで作るために三角形のレンガを用いたり)の紹介、素材の構成がわかる断面構成のダイアグラム、バジリカのオリジナルの建物、増築部分、ファサードの構成が理解できる断面模型などは非常にわかりやすく勉強になった。訪問時はパラーディオと同時代のスカモッティに関する特別展も開催されていた。これまであまり良い話のなかった人だが、近年再評価が進んでいるという。


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有名なバジリカは、中世由来の建造物(3ブロック分の商店街で、建物の一階に存在する二つの通りは中世の名残で、なおかつそのうちの一本はローマ時代につくられた道の名残だそうだ)を増築し2階部分にホールがつくられていたところに、パラーディオが一番外側の壁面を新しくデザインした。新しい壁面は、当然ながらオリジナルの建物の不規則なスパンから影響を受ける。この既存の建築からの要求と、一体的な建物としての全体の調和をどのように折り合わせるのか。パラーディオはアーチの大きさを一定に保ちつつ柱間の寸法を変えるために、3連の柱を持たせその間隔を変化させるというアイデアを用いている。このモチーフはのちに「パラーディアン」と呼ばれる。単なる装飾としてではなく、オリジナルの都市構造に新しい都市の様相を接続させるインターフェースとして位置付けることができ、興味ふかい。

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パラッツォ・キエリカーリでは、奥行きの浅い敷地に建設が予定されていたため、なんとかして建物の面積を増やそうとして前面にポルティコが設けられている。当時の法律では、私費で街路に屋根をかけポルティコを作るとその上を使っていいということが決められていたらしく、結果6メートルも敷地外に張り出すことができるようになっという。これも都市の構造的特性は、建築の設計に利用されている。

こうしてみると都市建築というのは、都市のアーキテクチャと建築のアーバニティ(都市性)が不可分なものとして存在するようなものとして考えられる。そしてそのこと最も顕著な現れがファサードに、装飾としてではなく、秩序の調停の場として現れる。

一方で、郊外の丘の上に建つヴィラ・ロトンダは、周囲からも歴史からも切断された建築のアーキテクチャだけで組み立てられている。こうした場所と歴史を照射する方向性は、そのまま近代の郊外住宅地につながっていくのではないか。そしてヴィラ・ロトンダの場合、単に周囲が空地というだけでなく、4周のどこから見ても同じ、言いかえれば表と裏、側面という区別が無いということが、この建築の彫刻的な性格を強めているように思われる。こうした彫刻性は近代建築を通じて展開し、現在のアイコニックな高層ビルのデザインなどに引き継がれているように思われる。(ザハの展示を見ていて思ったが、これまでは建築のアーキテクチャの代表は「幾何学」だったのが、現在では「アルゴリズム」でありそこで用いられる形状は生成的なものになってきているのではないだろうか。
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by shinichi-log | 2016-06-12 23:48 | daily | Comments(0)
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