2015/3/23に京都工芸繊維大学で行われたジャック・ヘルツォーク氏の講演記録。
録音禁止だったので基本的にその場で文字起こしたものがすべてです。なので確認などとれていません。しかも前半10分ほど抜けていたり、ところどころ内容も曖昧ですが、せっかくなので公開します。 またそもそも翻訳が間違っている可能性もあるので、もし自分が聞いたことと違ったという箇所があればおしらせください。 構造・空間・オーナメントの統合 いまここでスライドに書いてあるもの カテゴリーそのものは重要ではありませんが、理解を深めるために行っています。 左側にはビルディングタイプ、右側に3つの言葉(Structure/Space/Ornament) Structure / Space / Ornament(=単なる装飾ということでなく空間全体の表現) これら同時に連結しながら存在することが重要だと考えている。 建築を作るための道具なのです。 エバースヴァルデの図書館。これは形態と表面について考えた作品でした。しかし単なるデコレーションではない。空間が表面に圧縮されています。トーマス・ルフがイメージを選んびました。ゆえにコラボレーション。表面処理が印象的だったから、内部はあまり重要ではありません。コアが中心にあり、その周りに閲覧室や書架があるというよくあるものです。 これはプラダ青山と反対のアプローチです。装飾というだけではなくイメージのもつ質感が伝統的なファサードの代わりになるかの実験でした。構造が空間であり、同時にオーナメントでもあるということを目指しています。 構造・空間・オーナメントがどのような次元で統合されているのか。完全にそれを実現するのは難しい。けれども、徐々にこの3つの要素を建築のなかに取り込めるようになってきました。 初期の頃、ゲーツギャラリーはミニマリズムの建築です。半透明のガラスに挟まれた真ん中の層は、オーナメントであり、なおかつ構造です。そしてガラスはそれらの構成を見えるようにしています。 統合化の極端の例はマイアミの駐車場のプロジェクト1111 Lincoln Road。ここでは全てが構造で空間でオーナメント。鳥の巣もそうだといえる。そしてゴシックの教会。 リコラ社とのプロジェクトについてお伺いします。ここからいろいろな実験がはじまっています。構造・空間・オーナメントの統合化がはじまっている。クライアントとの人間関係、また継続的なコラボレーションについてお伺いできますか? 建築家として同じクライアントと仕事ができるのは嬉しい。満足してもらっているということです。バーゼルのハーブキャンディの会社ですが、事業の内容が土地に根ざしているということがとてもやりやすいと思っています。建築もまた大地と繋がっているわけです。基本的に建築というのは地面とつながっています。それは重要です。そうした価値を共有しています。テートモダンやプラダとも継続的な仕事していますが、クライアントとの関係を築くことにいつも努力しています。 最近できたリコラ社のハーブの倉庫は、建物が土でできている。ヨーロッパで土で作ったものとしては最大だと思います。本質的な質の高さがあって、非常に丈夫です。壁が建物自身を支えています。ここでも、3つの要素が統合されています。構造、空間、そしてそれ自身オーナメントでもあります。 そしてそこには、古い建築のような質が存在しています。素材の質というものは現在の建築では失われています。伝統的な建築との方法を取り戻しつつ、現代的な建築を作るというのはチャレンジなのです。 倉庫の中には乾燥したハーブが入っています。いろいろな山々からハーブを持ってきて、大きな袋にれて保管するのです。なので香りが本当にすごい。この香りがこの建築の強い構成要素になっています。それと土壁。そうした感覚的な質が重要です。自分の感覚で経験することができる。その時、香りはとても重要です。 そして、なぜクライアントがまた依頼してくるかという理由についてお話しします。この建物は通常より高価です。でも訪問者を呼び込めます。観光客や見学者を。そしてみんなびっくりします。建築だけでなく全てが素晴らしいからです。工場をみるということ以上の経験をすることができるのです。価値を、そしてより高い感覚を与えることができるかが重要になってきます。 現在では、ショッピングモールなどあらゆる場所において匂いが非常に強くなっています。 ここでは本物のハーブの匂いがする。素材のそのものの匂い。それは古くからある構成物です。きつい醜い匂いの空気と戦いたいと思います。そしてエアコンに管理されたものとは異なる快適さをつくりたいと考えています。 感じる、考えること、存在を感じること。それは毎日の楽しみ、そして香りの素晴らしさに気づくことなんですね。リコラ社は大地に根ざしつつ、同時にグローバル企業でもあります。ローカルでありながらインターナショナルであることが対話を生み出すのでしょうか?ヘルツォーク&ド・ムーロンがすでにそうなっています。感覚を呼び覚まし、思考のプロセスを刺激する。 生活を良くするというのが建築の唯一の価値だと思います。 建築は我々の喜びなのです。それをより良くするために建築あるのです。 住宅について話すと、家の簡単な形にこだわっています。日本でもスイスでも、心地よさ居心地の良さ、守られているという感覚にとって、シンプルであるということが重要だと思います。そういうことを考えています。一般の家屋だけでなくVitraのショールームでも用いました。この考えのもとに様々な可能性を探っているのです。同時に新しい形ばかりを作り出す必要はありません。目が疲れてしまている。そういうものはもういらないと考える時があります。ここではシンプルな形を使っていますが、それでも美しいものができます。 構造と表面の関係において、最適化をどう考えるか? 必ずしも「最適化」を目指さないから金額的に高くついてしまいます。最適化、合理化すると質感が出てこない。このリコラの倉庫では土壁が厚く、独立しています。ここに断熱材は必要無いので、このファサードとしては最適化されていると考えられる。一方構造のみをとって最適化ということを言ってしまうと、建築の質感は失われます。大事なのは全てを統一的に考えるということです。 多くの建物においては、構造の最適化が起こる。そこでコンクリートやスティールが多く使われる。建築におけるアートとは、他者を説得する試みです。コスト以外の価値、魅力をどのように実現していくのか。構造を合理化して安く作るのではなく、顧客を引きつけるためにつかうという方法もある。最適化というのは一つの要素だけで考えていてはいけない。たとえば料理において、お金をたくさんかけて一つの素材だけを最高のものにしてもいけない。最高のお肉だったとしてもワインが安物だったら?それは重要な点です。すべての要素を全体として一緒に見なければならないのです。 最適化はその特定の要素を愛することと関係しています。 公共空間について 公共空間という概念を日本において考えることは興味深いことです。なぜなら私は日本には公共空間は存在していないと考えるからです。公共の広場がないんですね。青山のプラダには建物の周囲にプラザとしての空間をつくろうとしました。それはヨーロッパの都市のような空間をつくりたかったからです。 日本のいいところは、小さな庭から入って、その奥にさらに小さな庭がある。そうしたイメージです。実際そこで活動は行われない。そしてインフォーマルな感じで人が集まるというのことが日本にはありません。日本の秩序・形式は厳格です。むしろ中国は管理がない。多くの文化は中国からきており、そこに革新性がある。日本は美しいが形式張っている。あまり理解されていないのではないかと思います。 マドリッドのカイシャフォーラムは、もともと発電所だった建物です。非常に密度のある空間で、これを美術館にするというものです。スペインは公共空間を大事にしている。人々が集まる場所、公共空間が欲しいと思いました。公共空間を作るという要望があったわけでないが、建築家として人々が集まって出会う場所が必要だと思いました。待ち合わせのような場所。美術に興味がない人も集まれるような広場です。ただし、道や土地が狭いので抜本的な解決策が必要でした。 そこで地下を活用しています。大地も重要な要素です。建物を持ち上げ、そこに人が留まるための場所を作った。マドリッドは大変暑いので地下室は快適。その場所の気候や文化に応じて考えている。場所性、そしてそこに住む人に関係しているんです。 また、既存の建物に手を入れていくというのは非常に難しいのです。今あるものを使うにしろ、新しいものを加えるにしろ、人々が場所を使う新しい方法を加えるということです。 建物がその場所性を変える力があると考えるか? われわれの仕事に多様性があるということ、それは世界の多様性を反映しています。地理的文化的違いを反映している。そこからヒントを得て作っているのです。自分のスタイルをもって作るという建築家もいるが、それはマクドナルドやコーラのようですよね。クライアントがいいというのであればそれでいいのかもしれませんが。けれど他のどこにもないものを作りたいという建築家も多く、それが我々のやり方なのです。 マイアミの建物を始めた時、ショックを受けました。そこには南アメリカの精神と北アメリカの生活がありました。人々は南アメリカの気質なので、どこもエアコンの効いた空間です。美術館の設計においては、海岸でみつけた水に浮いているような高床式のものにできないかと考えました。そしてすべてが見えるようにしたかった。地下はなく、すべて地上です。美術館のギャラリーからは、風景や水面を見ることができ、普通は内部か外部かになるが、ここではキャノピーが中間領域を生み出します。ハンギングプラントがカーテンのように設置され、まるで息をしているような状態を作り出しています。 アートのためのスペースといっても全て一緒ではりません。コレクションの内容によっても違います。ここは、まだあまりコレクションがないので、歩いて通ることができるオーディトリウムがあったり、アメリカ南部の雰囲気をもった空間になっています。 またマイアミの駐車場をつくりました。マイアミの人は大きな車を運転することを好みます。またプロムナードのように運転できる場所を探しています。ここは駐車場として最適化はされていないが、様々な用途に使用されているので、それでオーナーは儲かっています。そして今では人気の場所になっている。全て構造の柱でできている。上が広がった形になっているのは、車の動きに対応しているからです。前の広場もデザインしていて、それらはすべて関連しています。統合された構造と空間とオーナメントの統合のいい例だといえます。 駐車場を使ってパーティが開催されたり、美術館のような庭があります。 展示空間について 香港のM+も美術館です。埋立地なので他には何もない。香港は、すごく密度が高い、南部の暖かい気候です。でも感覚的な感じ、芸術感覚は街にはないです。 周囲の高層建築と競うわけではないが、高層ビルが生み出す(夜景の)背景に溶け込むようにしようと考えました。アーティストにはメッセージをだしたい。どれだけ街が混み合っているかをしってほしい。作家も高層ビルに住んでいる。高層のメディアスクリーンがあります。また地下にはたくさんのトンネルがあり、これを考古学のようにみせようとしています。このトンネルの処理の仕方がコンペで評価されました。ギャラリーが浮いたようになっていて、その上にメディアスクリーンつぃての高層ビルがあります。地下にトンネルの後を利用した空間をつくったのは、伝統的なギャラリーだけで展示することを好まない、驚きのあるような場所で展示したい作家が増えているからです。つまり様々な文脈にのっとった展示があり、この非常にラフなコンクリートの場所を地形にようにみてもらえたらと思います。ヴィジュアルカルチャーの美術館なのでアートの形態も様々なはずです。 ロンドンのテートモダンも、ただの白い壁のギャラリーがあるというだけなく、タンクようなスペースがある。伝統的なアートとは異なる人が集まっており、世界中の美術館が独自の空間や地形を提供することに躍起になっています。最初の改修時につくったタービンホールが成功しました。そこは公共空間で、作家のインスタレーションのスペースになっています。拡張プロジェクトをすすめているが、それも従来とは違うギャラリーとなります。形態は敷地の形状に関係している。縦にそのまま建ち上げることが法律で出来ないので変形しています。全体はレンガに覆われていて、それは全体の統一感が生まれるように考えました。新旧のコントラストが生まれないようにしたかったのです。そして建物を歩くだけで楽しい。来館者としてとても素晴らしい経験。階段もただ単に上に登るためにあるのではなく、素晴らしい経験をするためにつくっています。 高層ビルについて 高い建物をつくりたいわけではない。でも重要なタイプの建物だと考えている。様々な市場的な背景があるが、NYでは不規則に独立したユニットを積み上げていこうとしている。同じタワーの中ですがプランは異なっています。同じものが繰り返されているのではない。そしてテラスがたくさんあります。 アメリカでは多くがエアコンに頼っていますが、できるだけ外に出ることができる可能性を持った建物にしたいと思いました。部屋の中にいるのとは違った感覚を感じてほしい。基本的に高層建築についてはよりシンプルにということを考えます。99%の人にとってそれは遠くから見るものです。その時、彫刻的な意味がうまれるので、幾何学的な定義が必要になると思います。夜になると明かりがついて、どの建物も綺麗です。日中のほうが難しい。特に多くの人が住んでいるようなもの。NYではこういった建物が投資のために作られているがそれには参加したくない。生活に満ちたものを作る他のであれば密度の高いものをつくりたい。異なるユニットを積み上げるやり方は、よりプライバシーを感じることができる、生活の質につながると思います。ほとんどのタワーはオフィスですが、それはまた別のものになると思います。高層ビルは、家の重要なカテゴリーです。高層ビルに住むということいつてはあまり研究されていない。テラスによって内外の関係を作り出すというのは新しい試みでした。 アーカイブについてどう考えているか? アーカイブとか本については主にパートナーがやっています。そして展覧会はコミュニケーションの問題だと思っています。展示をどのようにおこなうかはとても複雑ですが、いろいろ研究はしています。一般的に建築の展示はダメなものが多いですね。彫刻とは異なり、アートのためにつくられたものではないわけですが、けれども美という側面は持っているわけです。そういう意味では、なぜそうなったかを理解してもらうためにアーカイビングしています。建物ができることを説明するための補助的なものとして構造的なアイデアや材料についてまとめています。 シャウラがーで行った展示は、なかなかいい展示だったと思います。市場のようにわれわれの作品を並べました。野菜や食べ物のように展示するのは好きです。別の展示では、ガラス面の光の反射で展示物がよく見えないということを試みました。目で見て理解するだけではだめ、感覚で理解することが重要なのです。
by shinichi-log
| 2015-03-27 16:21
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